君影草~夜香花閑話~

「千代姐さんが?」

「一緒にいるかもしれないし。その……あの千代姐さんの剣幕じゃ、邪魔なんかしたら、おっかないし」

 千代が不機嫌なのは明らかだ。
 あの後真砂が千代の相手をしていれば機嫌は直っているかもしれないが、真砂が相手をしたとも思えない。

 真砂が冷たいのは元からだが、ここに来てからは、一段と人を寄せ付けない。
 母屋での暮らしで、少し人と協力することはあるものの、人を拒絶する空気は、一段と強くなったような気がする。

 女子を抱くこともなくなったような。
 身体に触れられるのを、極端に嫌うようになった気がするのだ。

「頭領、どうしちゃったんだろう。母屋で暮らすことを受け入れてくださったから、てっきりやっと心を開いてくれたのかと思ってたのに。傷の手当ても、誰にもさせないし」

 少し寂しそうに言うあきに、捨吉は、う~ん、と唸った。

「頭領はさぁ、今は、大事なものを失ったばかりだから、しょうがないよ」

 ぽつりと言う。
 あきが、訝しげな顔で捨吉を見た。

「腕のこと?」

「違うよ。自分のことじゃない」

 しばし、じっと捨吉を見ていたあきは、ふと思いついたことを口にした。

「もしかして、あの女の子?」

「……知ってたっけ? ちっちゃい子が、頭領の傍に、いつもいたろ?」