君影草~夜香花閑話~

 兄妹は、回廊を歩いて母屋に行った。
 長老の姿を認めるなり、ててて、と駆け寄る。

「おやおや、どうされた?」

 行儀よく長老の横に座った兄は、懐紙を出して持っていた金平糖を広げた。
 妹のほうは、母屋の庭で少年らに稽古をつけていた捨吉を目ざとく見つけるや持っていた毬をぶつけ、遊んで貰おうと駆け寄っていく。

「いつものことですよ。全く、父様も母様も仲良しなんだから」

「ほほ。良きことではないか」

 全く、と照れる少年に柔らかな笑みを向け、長老は、ちらりと離れのほうへと目をやった。




「もぅ真砂。まだ日は高いのに」

 真砂の腕の中で、深成が身を捩る。

「夜はあいつらがいるからな」

 言いつつ、真砂は深成の帯を解きながら身体を倒す。
 着物を広げると、ゆっくりと深成の身体を愛撫していった。

「……せめて奥の寝間でないと、誰か来たら恥ずかしい」

 真砂に身を任せながら、深成が呟くように言うが、真砂は手を止めることもなく、少し笑った。

「誰かが部屋の前に来るまで、気付かない俺だと思うのか?」

 自信たっぷりに言うが、深成はちょっと頬を膨らます。

「真砂、わらわを相手にしてても、夢中にはならないんだ?」

 おや、と真砂が顔を上げた。
 にやりと笑うと、素早く深成の唇を奪う。

「十分夢中になってるさ。この俺が、こんな日も高いうちから、我慢出来なくなってるんだからな」

 深成は相変わらず口をへの字に曲げたままだが、頬を染めた。
 何気に上手く誤魔化されたような気もするが、嘘ではないのだ。

「もぅ、ずるいんだから」

 口ではそう言いながらも、深成は嬉しそうに、真砂に唇を寄せた。



*****おしまい*****