「そろそろ町の様子を見てこようと思う」

 うららかな日和のある日、真砂はいつものように母屋で中の長老に言った。

「大分暖かくなったし、ここでもう雪がなければ、町はすっかり春だろう。矢次郎も、そろそろ店を出す頃だ。まぁ指令があるわけじゃないから、見つからないかもしれんがな」

「そうですな。世の情勢はどう変わったのか。屋敷もそろそろ出来ます故、入用なものもあるでしょうし」

「とりあえずは俺が行って、様子を見てくる。危険がなければ、後は皆で買い出しに出かければいいだろう」

 頷き、長老はぐるりと部屋を見回した。

「屋敷も立派に建ちましたな。とりあえずは、わしらは隣に移りますかなぁ」

 少し、真砂が眉を顰めた。
 この新しい屋敷内で、一番広いのはこの母屋だ。

 隣もそれなりの広さはあるが、今母屋で暮らしている人数は、結構多い。
 孤児や身寄りのない者が、皆で暮らしているのだ。
 屋敷が完成すれば、一人で暮らすために母屋を出る者もいるだろうが、それでも今より狭くなると大変だろう。

「長老らは、今まで通り、ここで暮らせばいいだろう」

 訝しげに言う真砂に、長老は、とんでもない、と手を振った。

「母屋は屋敷の中心。党の頭領が住まうところであるべきです。屋敷が成った暁には、ここは頭領、あなた様がお使いなされ。皆、そのつもりです」