夕闇が迫る頃、母屋ではあきたちが夕餉の支度をし、真砂は男衆から屋敷再建の進み具合を聞いていた。
 ふと、あきが回廊に立ち、すぐに戻ってくる。

「頭領」

 真砂の傍で膝をつき、あきが回廊を指差した。

「源七郎さんのおかみさんが」

 真砂が顔を向けると、回廊に平伏している女子が見える。
 ちら、と真砂はあきを見た。

 何の用か、と聞きたいのだろう。
 が、あきは首を傾げた。

 仕方なく、真砂は立ち上がって回廊に出た。
 真砂が近づくほどに、女子の身体が小さく縮こまる。

「……何の用だ」

 しばし女子を見下ろしてから、真砂が口を開いた。
 その途端、びびくんっ! と女子の身体が震える。
 こんなに恐れられるのは久しぶりだ、と思いつつ、真砂はそのまま女子の言葉を待った。

「あ、あの……」

 ようやく、女子が小さな声を出した。
 そして一旦止まると、意を決したように、早口にまくし立てる。

「わたくしは源七郎の妻にございます。このたびは家の愚妹をお助けいただき、誠にありがとうございました! その……お、お礼も今まで申し上げませんで、誠に誠に申し訳なく……。お怒りはごもっともなれど、遅ればせながらお礼言上に参った次第で」