胸には人形を抱き締めている。

つい、先週に買ったばかりの人形である。

こうして、親子で無事だったことが夢のような気がしてくる。


あの3・11の光景が甦る。

あれから、まだ数年しか経っていないのだと、染々と思う。

家族と散り散りになり、避難所に身を寄せた多くの被災者の方々や、夢を明日を奪われた多くの命。

積み上げられた瓦礫の山。


停電だけでさえも、こんなに不安なのに。

明日の見えない不安、再建の見通しも……。

住み慣れた街に何時、もどれるかどうかもわからない──震災の爪痕。


復興対策、支援など確かな物は僅かにしかない。


それでも……顔をあげ、見えない希望を手繰り寄せ前へ前へと歩き出す、東日本の人々の強さを思う。


まげてたまるか!



蝋燭の炎が静かに揺れている。