私には、ストーカーがいる


ーー

飲み会した。
とは言っても、参加人数、私含めて三人。

酔いもそこそこに、帰ろうかーっとなった夜の道中。

「つか、あんたストーカーの件はどうなったの?」

巻き髪茶髪の友人Aは言う。

「私心配だよぅ。大丈夫なのぉ?」

きゃるるんポジションの友人Bも続く。

「あー、んー。まあ、以前よりも充実した生活を送れているかな」

二人の「は?」が、ハモったところで、背後から黄色い歓声が聞こえた。

つられて振り返れば、私たちと似たような飲み会帰りの女性三人が、一人の男性を囲んでいる。逆ナンフォーメーションだ、性別逆なら通報される。

「あのー、お一人ですか?」
「一緒に飲みましょー」
「良ければメアドでもー」

酔いとは恐ろしい。はっちゃけた三人組はぐいぐい押しているけど、男性は微動だにせず、電柱後ろから動かなかった。

「身長たかぁ。顔は暗くてよく見えないけどぉ、絶対イケメンだよねっ」

「そうかしら。ーーって、ちょっと何早足で歩いてんのっ」

友人ABが私の後に続き、さらには黄色い歓声も後に続くイコール、男も移動している。

「いや、私動かなきゃ、あの人動かず取り囲まれたままかな、と」

「はあ?」

「あ、さっきの人、後ろにいるよぉ。帰る方向おんなじなのかなぁ?」

「お一人なんですよねええぇ!」
「朝まで飲みましょおおぉ!」
「メアド駄目なら電話番号をー!」

工事案内の看板の裏からする声で、作戦失敗を知る。

このまま進めば、彼はハイエナーーじゃない乙女たちから颯爽と去って行ってくれるかもしれないけど。

「顔、やっぱり暗くて見えないな」

ストーカーさんは、顔を見せない。鉄則だ。

よっての話、私はストーカーさんの顔を見たことはない。