仮面やメンヘラ(もう「~女」をつけるのも面倒なほどだ)、






その他、部活動生が帰ってから私達は遅めに校舎から出てきた。






昇降口から二人とも無言で歩き、校庭を抜け、







学校の敷地外に出たところで彼が問う。










「で、話って何?







俺早く帰りたいんだけど」






「カミングアウトしたんだって?」









いきなり話を振ってきた私に彼は首を傾げる。








「何が?」







「本人に告白したんでしょ?」







「あー…あいつ?」









名前を聞きたくないというような顔だ。







彼は説明するのも面倒くさそうにしている。









「あいつは、蛍のことが恋愛感情的な意味で好きだって言ってた」






「は?嘘でしょ?」








「昨日好きだって言われたって言ってて







私はそれの一応の確認」






「あー…」







彼は湿気でもっさりとした髪をわさわさとかき乱すと






面倒くさそうに口を開いた。








「あいつそういう意味で聞いてたのね」






「え、じゃあなんだと思ってたの」








「自分が嫌われてると思って





そういう友達的な意味で言ったのかと思ってた。」








今気づいた。







彼、ずれてる。







言ったら気まずくなると



そういうことも言われたと

仮面はほざいてたけど…






ちょっとよく分からない。









「俺の中身は適当と勘で出来てるから」






「うん。今気づいちゃったよ。」








急におかしなことを言いだしたので


私はそれに言葉を返した。






不思議な会話に笑いがこみあげてきて我慢せずに笑った。







不安を紛らわせた。







彼はそんな私を見てにこにこと作り笑いをしている。







お酒なんて飲んだことがないのに酔っぱらった気分だった。










私は彼が面白くて思わず笑うのを止め、彼を見た。









急に笑い声が聞こえなくなり




不思議に思ったのか彼がこちらを見た。









「蛍って不器用?」








口から出た言葉は大したことでもなかった。






今言う事じゃないよなぁ~と思いながら彼の返答を待つ。







「手先は微妙だなぁ」








彼からそんな答えが返ってきて、少し教えてやろうと思い








「蛍、笑顔がへたくそ。






1日3回くらい作り笑いしてるでしょ」







「え、バレてた?」







「もう既にバレてるっての」









後ろから声が聞こえ、びっくりして振り返ると






そこにいたのは修也だった。







おかしくなった地球の天候は


日本だけに贔屓はしてくれないようだ。







今日は特段冷え込む。






修也は白チェック柄のマフラーを顎まで巻き






立っていた。









「あ、言っとくけどつけてきたりとかはしてないからね」








彼は念押しした。







「嘘くさいな」







「いや、本当だって。俺今までここで待ってたんだもん」









なんで?と思ったが、答えはすぐに分かった。







彼は歩く人たちの一人だ。








そして帰るメンバーは女子二人に男子一人、








おまけに修也は二人が苦手だ、






そりゃあ逃げたくもなる。







「つーかさ蛍、お前ずっとバレてないと思ってたの?」






「うん」







「既に一部の人たちにバレてまーす」







私が笑って言うと二人は笑う。







今度は本当の笑顔だった。








「その顔で笑えばいいじゃん」






「それができないから困ってんの」








彼は眉尻を下げて笑う。








「じゃ笑わなきゃいいだろ」








修也が正論ともいえるべきことを言うと







「笑わないとつまんないじゃん」







その言葉の意味。それは、








相手にとって、つまらない奴だと思われてしまうということだろう。






そんな彼は意外とクールに気取っているだけで





臆病なのかもしれない。








「じゃあ、約束しようよ」





「「何の?」」








二人は声を揃えた。







そんな二人を微笑ましく思いながら宣言した。








「私と修也がいないところでは笑っていいけど






修也と二人で帰ってる時とかは作り笑いしないこと!!」









彼はポカンとした顔で私と修也を見つめる。







そして突然笑い出した。







彼が気分を害したんだと思い、

焦って否定しようとしたら








「いいね、それ。最高じゃん」








死ぬほどおかしなものを見たような笑い方で






彼は糸が切れたように笑い出す。







しまいには涙まで出てしまい一人で勝手に笑っていた。








修也は彼の背中を叩きながら笑い、私は彼が面白くて笑った。








久しぶりに楽しくて充実した1日だった。