「手出すんじゃねえよ」
いつもと全く違う声だった。
冷たく低くて怒りが混じった声。
彼の感情の高ぶりようは初めて見た。
彼は引き攣った表情を浮かべた
麗亜の胸倉を掴んだ。
「俺がお前にきーさんにしたことと同じことしても
お前は何も言えないからな」
殴るかと思ったが彼はそんな真似をせず、
麗亜から手を外した。
麗亜は足からへなへなと座り込む。
よっぽど恐怖を覚えたんだろう、
彼を見る事も私を見る事もせずに一人泣き出した。
麗亜の取り巻きだろうか、
女子が駆け寄っていく。
「行こう。」
彼はいつの間にか私の前まで来ていた。
普段と全く変わらない笑顔に私は戸惑った。
いや、戸惑ったというより疑惑を抱いた。
どうして、一人の友達に過ぎない私なんかに
そこまで執着するのか。
一生解けることがなさそうな疑問を抱え
私は無言で頷いた。