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これからの世界とはまた別の世界。
それは、高校一年生のある日の出来事だった。
「――冷たっ……」
授業と授業の間の休み時間、私はお手洗いに行っていた。言うまでもなく個室で、そこから出ようとしたそのとき、大量の水が降ってきた。
シャワーなんていう生易しいものじゃない。叩かれるような感覚。水の勢いはそれくらい強かった。
――ああ、いじめか。
理解するのは早かった。誰がしていることなのかということもすぐにわかった。
髪も制服も靴も壁も、全部びしょびしょ。
とうとう始まった。
私にはそういう認識でしかなかった。きっとそれは、こうなることを自分の中のどこかでわかっていたからなんだと思う。
誰がこんなことをするのか。それはもちろん、“彼女”が。
私にとってはそんなに驚くことでもない。
彼女は私といるときは心底嫌そうな顔をしていた。態度で表して、それを私に見せつけていた。そういう方法で私を遠ざけようとしていたのだ。だけど私が離れようとしなかったから、彼女が自ら離れていった。
でも一つだけ言っておくと、彼女は私といるときは心底楽しそうだった。私と距離を置いてから付き合うようになった女子二人と過ごしているときよりも本当に楽しそうだった。
思い込みなんかじゃない。
だってあの二人も、本当は彼女がいないほうがよかったのだから。彼女がいないとき、二人とも心の底から笑っていた。それはそれは幸せそうな笑顔だった。荷物がない。そんな顔だった。
私を含め私の周りにいる人間は、みんな歪み合っていた。お互いの感情に敏感になりつつも気づかないふりをしたり、自分の本音を腐った建前で必死に隠したりしてた。
「あたしから離れてもらうためよ。これに懲りたらもう付きまとわないでね」
――……それ、本当は私なんかじゃなくて自分自身に言いたいことなんだよね?
私は知ってるよ。あなたも気づいてるんでしょ? その言葉は“あの二人のもの”なんだってことくらい、私は知ってるよ。
だから私は、離れてやんない。
この程度の嫌がらせで離れられるほど、私は潔くないんだよ。
――そしてそれからも、私は彼女と一緒にいた。
それはそれは嫌そうな顔をされたけれど、でもとても嬉しそうな顔もしていた。
結果的にこの選択が、別の世界の無限ループへと私を導いていく。
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