「ミオ!」突然、母親の声が耳に届いた。


「ミオ起きてるー?」


何やら慌ただしい空気を感じるのはあたしの気のせいではないようだ。


とりあえずスマホを持って、リビングに下りる。


「起きてるけど、何」


着替えてる途中なんだけど、と続けようとしたときだった。


『――えー速報です。昨夜とある高校で、男性教師が死亡しているところを発見されました。戸締まり担当になっていた女性教師が血まみれになって倒れている男性教師を発見し、警察に通報したとのことです。亡くなった男性はその学校で数学を教えており――…』


突如視界に入ってきた、それ。


耳からの情報だけならば簡単に聞き流せていたかもしれない。


でも、眼から入ってくるものは確実にあたしを釘付けにした。


『――中継です。私は今、通報のあった学校に来ています。男性教師は、この校舎から転落したと見られています。あそこに血痕が見えますでしょうか』


中継スタッフの言葉を合図に、生々しい血痕だけが残るコンクリートが拡大される。


『この血痕から、かなりの衝撃だったことがうかがえます。詳細はまだよくわかっていないのですが、三階以上から転落したのではないかと思われます』


…あのコンクリート。


あたしは…。


あたしはあの場所を知っている…!


『そして――』中継は続く。


『あの校舎の三階では二人の女子生徒が怪我をした状態で発見され、病院で死亡が確認されました。二人とも背中に大きな切り傷があり、何かしらの鋭利な道具で後ろから襲われたと見られています。警察は現在、近所の住民に変わったことなどを聞くほか、この高校の生徒たちにも情報の提供をお願いし、犯人を――』


…嘘、でしょ……?


「ミオの学校で昨日こんな事件があったなんて…」


怖いわね、と母親は言うけれど、今のあたしはそれどころじゃない。


まさかそんな…。





――…ピリリリリリリリ。





完全に放心状態と化していたあたしを我に返すかのように、あたしのスマホが鳴った。


画面に表示されていたその名は――。


シイナだった。