「ただいま」


七限目が終わって約三十分。あたしは帰宅した。


「おかえり」いつものように、母親が出迎える。


「今日は一人で帰ってきたのね」


なぜわかる。あたしがそんな顔をしていると、


「いつもより静かだったから、今日はあの二人は一緒じゃないんだなってわかったのよ」


…母親恐るべし。


あたしの母親はいつもニコニコしている。


他人からはヘラヘラしている、とたまにバカにされるけど、それは違うとあたしは思い続けてきた。


今も笑顔でいることは変わらないが、何気に鋭い。


「あの二人は用事があるって言ってたから」


とっさに答えるあたし。


…あれ、あの二人、そんなこと言ってたっけ、ていうかそもそも今日は会話してないな、なんて自分で思いながら。


まぁ俗に言う嘘というやつだ。


あたしだってバカじゃないから薄々感じていたけど、あの二人に嫌われてる、なんてさすがに言えない。


嫌われるのも当然だしね。


だからって別に何とも思わないけど。


むしろあたしは、それでいい。


「そう。ミオもみんなも、忙しいのね」


「…まぁ、そうだね」


テキトーに相槌を打っておいた。


あたしとみんなの“忙しい”はだいぶ違うけど。