むやみやたらに言ったわけじゃない。


シイナを誘ったのは、あたしにだってそれなりの目的があったからだ。


「あの角を曲がると狭い路地に入るんだ」


学校を出てしばらく歩いたところで、少し遠くに見える曲がり角。


あたしはその角を指差した。


「家までの近道になるからちょうどいいの。通るのはあたしだけだから、他の人なんて気にしなくていいし使いやすいんだよ」


ここまで情報を伝えておけば、何かあるときにはシイナは必ずここを指定するはず。


「もし不審者が出たら危ないよ」


…そんなこと、これっぽっちも思ってないくせに。


「シイナってば、心配しすぎだよ」


それでもあたしは笑顔を絶やさなかった。


それに対して、シイナの表情はさっきから何も変わらない。


きっと彼女ももう気づいている。


あたしが“もう一度”彼女を殺そうとしているということに。


だからそんなにも冷静でいられるのだろう。


逆にそれが違和感を生んでいる。


“あの日”までのシイナは、少なくともそんな人間じゃなかったから。


“あの日”の犯人があたしであることを知っているからこそ、焦りを見せまいとしているんだ。


でもね。


それは、シイナだけじゃない。


そんなの、あたしだって同じだよ。