自分の教室に向かっている途中、シイナの後ろ姿が見えた。


一人ではない。


誰かと話している。


茶色に近い赤色の短い髪、フードのついたグレーのパーカー。


…男の子?


この学校の生徒だろうか。


でも制服は着ていないし、すれ違っても注意する先生はいない。


だけど。


なんとなく、あたしはあの少年を知っている。


感覚の問題なのだが、あたしはあの少年をよく知っている。


身体が、そう言っている。


他の人間にはあの少年が見えていないのだろうか。


そもそもあのシイナとどう関係しているのだろう。


「いいや、わかってねぇ」


そんな声が耳に入ってきた。おそらく赤髪の少年のものだろう。


「わかってるってば!」叫ぶシイナ。


…へえ。


一応、シイナにも喧嘩できるだけの知り合いがいたんだ。


「……まぁ、いっか」


あたしには関係のないこと。


どんな関係であれ、あたしが殺されなければいいだけの話なのだから。