僕の幸せな記憶

「おーい。お兄ちゃーん!早くしないと遅刻しちゃうよー?」

聞き慣れた明るい声が一階から、開けっ放しのドアを抜けて響いてくる。
「今行くから待ってろ!」

それだけ答えるとドタバタと騒がしい音をたてなが、階段をおりて行く。
玄関には既に靴を履いた妹の百合香が待っていた。

緩めに巻いた髪はピンク色のシュシュで一つにまとめてあり、流行りの服をオシャレに着こなしている。

僕の自慢の妹だ。

余命宣告を受けてからも、百合香だけが、家族だけがそれまでと変わらずに接してくれた。

家族や親戚と触れ合っている時は病気のことなんて忘れることができた。

僕が、K大の文学科に行きたいと言った時も無邪気な笑顔で
「じゃあ、私もそこに行く!」
って言ってくれたんだ。