一瞬、顔色を変えたものの、すぐに気を取り直したようにそう叫ぶリオン。だが、彼のその声に応える者はいない。ただ、部屋の外からは「恐ろしい」、「太陽が消えた」という、震えるような声だけが聞こえてくる。
「被害はないか! 誰でもいい、応えろ!」
その声と同時に開け放たれる扉。そして、リオンと年の変わらないような男が飛び込んでくる。その顔は蒼白になっており、外で起こっていることが並大抵のことではないことを如実に物語る。
「カイト、何があった。人々は何に怯えている」
「リオン様、蝕が起こっております。そして、つむじ風も猛威を振るっております」
カイトの声にリオンは信じられないというような表情を浮かべるだけ。そんな彼に追い打ちをかけるかのような言葉がぶつけられる。
「それと……先ほど見たこともない珍妙な姿をした娘が現れました」
「娘? 一体、どういうわけだ」
あまりにも一気にいろいろなことを聞かされたからだろう。リオンはどこかで判断するということを放棄している。となると、この場では事情を知っているであろう人物に訊ねるのが一番。
だが、その白羽の矢に立ったであろうカイトもリオンと状況は変わらない。それでも、訊ねられたことには応えないといけないと思っているのだろう。首を傾げながらも言葉を続けている。
「蝕が始まったことも不思議と言えば不思議なのですが……それよりも、先ほどのひときわ強いつむじ風が吹いた後、娘が中庭に倒れておりました」
「中庭? だとすれば、侍女がふざけた格好でもしているのではないのか?」
話をしているうちに少しずつではあっても落ち着いてきたのだろう。リオンの声は先ほどとは違ってきている。それを耳にしたカイトが平静さを取り戻しているのは間違いない。それでも、彼は自分が目にしたことを信じられないという口調で語り続ける。
「たしかに、そのことも考えました。しかし、この城には黒髪の娘などおりませんでしょう」
カイトのその声に、リオンはすっかり驚いた表情を浮かべている。そんな彼を見ながら、カイトは事実だけを述べ続ける。
「蝕が起こることを感知しえなかったことは怠慢と言われても仕方がないことです。もっとも、今回のことはエリアル様も気づいておられなかったのです。そして、それと同時に起こったつむじ風がまっすぐに封印の洞窟へと向かっている。それらのことから、これは神であるデュランダル様が起こされた事態ではないかというのが我々、巫(ヨシマシ)の一族の見解ではあります」
「なるほどな。しかし、神は気紛れだとしか言いようがないな」
「リオン様、そのようなお言葉は神に対する冒涜ととられるのではございませんか?」
リオンの言葉に焦ったようなカイトの声が被さってくる。もっとも、たしなめられた方がそのことを良しと思っているわけではない。だからこそ、リオンは思っていることを遠慮なく口にしていく。
「お前たちの一族ならそう思うんだろうな。だがな、鍵であるエリアルはこの地にいる。そして、封印が解ける前に動こうとしていた。そのことは間違いないんだろう?」
「はい、エリアル様は準備も整っておりましたし、明日にも出立の予定でした」
「それに対して横槍を入れてきたのは誰だ? 他ならぬ神ではないか。このままでは何が起こるか分からないというのは巫の一族であるお前たちなら簡単に分かること。違うか?」
「たしかにそうです。しかし、今はそれもですが、もっと重要なことがございます」
「被害はないか! 誰でもいい、応えろ!」
その声と同時に開け放たれる扉。そして、リオンと年の変わらないような男が飛び込んでくる。その顔は蒼白になっており、外で起こっていることが並大抵のことではないことを如実に物語る。
「カイト、何があった。人々は何に怯えている」
「リオン様、蝕が起こっております。そして、つむじ風も猛威を振るっております」
カイトの声にリオンは信じられないというような表情を浮かべるだけ。そんな彼に追い打ちをかけるかのような言葉がぶつけられる。
「それと……先ほど見たこともない珍妙な姿をした娘が現れました」
「娘? 一体、どういうわけだ」
あまりにも一気にいろいろなことを聞かされたからだろう。リオンはどこかで判断するということを放棄している。となると、この場では事情を知っているであろう人物に訊ねるのが一番。
だが、その白羽の矢に立ったであろうカイトもリオンと状況は変わらない。それでも、訊ねられたことには応えないといけないと思っているのだろう。首を傾げながらも言葉を続けている。
「蝕が始まったことも不思議と言えば不思議なのですが……それよりも、先ほどのひときわ強いつむじ風が吹いた後、娘が中庭に倒れておりました」
「中庭? だとすれば、侍女がふざけた格好でもしているのではないのか?」
話をしているうちに少しずつではあっても落ち着いてきたのだろう。リオンの声は先ほどとは違ってきている。それを耳にしたカイトが平静さを取り戻しているのは間違いない。それでも、彼は自分が目にしたことを信じられないという口調で語り続ける。
「たしかに、そのことも考えました。しかし、この城には黒髪の娘などおりませんでしょう」
カイトのその声に、リオンはすっかり驚いた表情を浮かべている。そんな彼を見ながら、カイトは事実だけを述べ続ける。
「蝕が起こることを感知しえなかったことは怠慢と言われても仕方がないことです。もっとも、今回のことはエリアル様も気づいておられなかったのです。そして、それと同時に起こったつむじ風がまっすぐに封印の洞窟へと向かっている。それらのことから、これは神であるデュランダル様が起こされた事態ではないかというのが我々、巫(ヨシマシ)の一族の見解ではあります」
「なるほどな。しかし、神は気紛れだとしか言いようがないな」
「リオン様、そのようなお言葉は神に対する冒涜ととられるのではございませんか?」
リオンの言葉に焦ったようなカイトの声が被さってくる。もっとも、たしなめられた方がそのことを良しと思っているわけではない。だからこそ、リオンは思っていることを遠慮なく口にしていく。
「お前たちの一族ならそう思うんだろうな。だがな、鍵であるエリアルはこの地にいる。そして、封印が解ける前に動こうとしていた。そのことは間違いないんだろう?」
「はい、エリアル様は準備も整っておりましたし、明日にも出立の予定でした」
「それに対して横槍を入れてきたのは誰だ? 他ならぬ神ではないか。このままでは何が起こるか分からないというのは巫の一族であるお前たちなら簡単に分かること。違うか?」
「たしかにそうです。しかし、今はそれもですが、もっと重要なことがございます」


