太陽を隔離し、大地を埋め立て、水さえも失っておきながら、人類は滅びなかった。

その理由が…… 自然を打ち崩し、すべての生命を奪い取った「化学」によってだというのだから皮肉としか言いようがない。
最早、人類は化学なしには生き残れないということだ……



それでも人は、永遠の生命を渇望した。
 映像やロボットを除けば人間以外に存在しえないこのシェルターで、不老不死を求めた。



そして150年前……



ついに、限りなく不死に近い延命術を発見した。

これは太古の昔にもてはやされた映写機から発想を得たもので、肉体を専用のスクリーンに接続し、意識を出力するものだ。
肉体は生命維持プログラムによって適度な代謝のみを繰返し、組織の磨耗を通常の30分の1にまで抑えられる。
しかし、精神体はスクリーンの中でしか存在しえないし、肉体と同じく…… 30分の1の速度で老化してしまう。そして何より、一度プログラムを作動させてしまうと永久に肉体には戻れないのだ。



それでも人は先をこぞってプログラムに身をとした。