「そっか……
 生きていたんだ……」

 静香が、小さくうなずく。

「でも、一枚噛んでいるってどういうこと?」

 達雄の質問に百寿が答える。

「傍に轟の姿が防犯カメラに写っていてな……
 そして、この日……
 風舞を張っていた刑事が何人か死体で発見された……」

「それってもしかして……」

 達雄が何かを悟り百寿が言葉を続ける。。

「ああ。
 風舞と轟は組んでいる。
 そして、もう一つ残念な知らせがある」

「残念な知らせ?」

 茂が心配そうな表情で百寿を見る。

「杉山 小十郎を覚えているか?」

 百寿の言葉に茂たちの表情が曇る。

「ゆかりさんの元旦那の?」

 みゆきが、小さな声でそういった。

「ああ。
 小十郎が、脱獄した」

「……え?」

 茂には一瞬百寿の言っている言葉がわからなかった。

「恐らく組織的な犯行だと思われます」

 南が言葉を付け足す。

「組織……だと?」

 達雄がそう言うと南が声を低くしていった。

「自らをテオスと名乗るギフト所持者の組織です。
 粗悪な集団として裏社会では名の知れた組織です」

「テオス……
 古代ギリシャ語で神か……」

 達雄が顎に手を当てる。

「ああ。
 つまりだ。
 また、どうとくのじかんだ。
 小十郎は、またゆかりさんと万桜ちゃんを狙ってくる。
 お前らは、またゆかりさんと万桜ちゃんの護衛を頼みたい」

「わかった」

 達雄が返事をした。

「ふふふふふ……
 大きくなった私たち。
 そして、能力を失った小十郎。
 勝敗はもう決まっているわね」

 みゆきが、そう言って得意気に笑った。