甘い時 〜囚われた心〜

「貴様…自分が何を言っているのか分かっているのか!!」

晋也の言葉に、ただジッと見るだけで答えない。

「雛子を選ぶという事は、神楽の力はいらないという事なんだな!?」

「いえ…神楽家の力は必要です。政財界へのコネは、これからの桐生院の事業にかかせませんから」

躊躇することもなくハッキリと言う。

ギリリ…と晋也の歯をくいしばる音が聞こえた。

「私が、君を手助けするとでも言いたいのか…?」

地の底から出るような低い声。

それを聞きながら、なぜか笑いが盛れる。

「ふっ…協力なんて頼むつもりもありません」

その顔は、怪しく微笑み、なぜか強気だった。

「尚人…」

「はい」

ビジネス鞄の中から茶色い封筒を取りだし、桜華に渡した。

「これをご覧ください」

畳を滑らし、封筒を晋也の前に置いた。

無言で封筒を手にし、中身を取り出す。

「私の要求は、神楽家の当主の座を雛子に返していただくこと。それだけです」

中身は数枚の紙。

内容を見て晋也は目を見開いた。

「あなたが、当主になる為にバラまいた裏金の記録ですよ」

晋也の手が震えている。