王はこの時期、やることがない。
新人戦が終わってから二ヶ月、イベント事が無いからである。
しかし、この時期ならではの楽しみも、王には存在する。

「そろそろ・・・か」

玉座の右側、ひじ掛けのすぐ脇には白と銀、そして紅で彩られた美しい剣が刺さっている。その反対側、左のひじ掛けの脇には黒、金、青で彩られたこれまた美しい剣が刺さっている。

聖剣ジークフリードと聖剣カリヴァーン。

どちらも強力な剣だ。ジークフリードは王の、カリヴァーンは王女のものである。
王の楽しみというのは、このジークフリードの刃を磨ぐことなのだ。
王家はもともと鍛冶屋の家系らしい。その為子どもの頃から鍛冶を習ってきた。
現在の王は家系の中でも優れた鍛冶職人だと言われている。

「いよいしょっと・・・」

剣を抜き、磨ぎ石を当てる。刃をよく見ながら、少しずつ、だが大胆に、磨ぎ石を動かす。

「~~♪」

王はもう56歳だ。だが剣をさわるとき、その時だけは心が若返る。
十年前、一本の剣を打った事で剣が好きになった。

その銘は、カリヴォルノフ。

カリヴァーンを徹底的に調べ、少しでも近づけるように心血を注いだ剣だ。
無論、カリヴァーンを完全に再現など出来るわけがない。それでも自分の持てるすべての力をつぎ込んだ。

結果は大成功。聖剣に負けるとも劣らない剣が出来た。その剣は今・・・

「どうしてんだろうな、あいつは・・・」

自分の息子の18歳の誕生日に渡した。
王には二人の息子がいる。兄のキルジと弟のイハドという名前で、キルジが20歳、アリエスが18歳のはずだ。
筈、というのは、剣を渡した兄のキルジの方が二年前に家出をしたため、よく分からないからである。

ー僕は僕なりの答えを見つける。父さんには分からない答えをー

そういって、弟のイハドとともに出ていった。あれから一度も会っていない。

「久しぶりに会いたいものだ・・・」

そんなことを考えているうちに刃は美しく磨ぎあがった。

「よし!出来た!」

完成した剣を元あった場所に戻そうとしたとき、王の部屋の扉がノックされた。

「誰だ?入れ。」
「ありがとうございます王様。失礼します。」

そう言って入って来たのは・・・













キルジとイハドだった。