そして、あっという間に時間が過ぎて。

気づいたら帰りの電車に乗っていた。

「可愛い洋服あってよかったね」

「何だか…申し訳ないですよ。やっぱり」

「だったら、今度また出掛けよう?」

「そんなことでいいのなら」

「うん、次はカメラ見に行くか」

「ケータイは買いましたが…」

「スマホだろ?使い方は藍に聞いて。あ、忙しいなら俺でもいいんだけど。

カメラも一応大事なんだよ」

「そうなんですか…」

ガタンゴトン…。
心地よく電車が揺れる。

睡魔がゆっくりと訪れた。

「ゆっくり寝ていいよ」

優しいその声が、いつまでも響いていた。

お兄ちゃんとは違う人だけど、とても優しい兄のような存在。

よかった、窪野さんと出会えて―…。


家に着くと、窪野さんとバイバイした。
メアドという何かをケータイにいれたし、後は使い方を藍に聞くだけだ。

部屋の鍵を開けると、やっぱり1人だった。

今頃お仕事を頑張っているんだろう、ふとそう思った。