俺が聞いた質問に対して、頷くだけだった。
部屋に入れると、
「お前喋んないの?」
するとようやく声が聞こえた。
弱々しい声で、たどたどしく。
「…いえ。そういうわけじゃ…」
早く俺に慣れて欲しい、そう感じた。
(兄貴が妹思いってのも、何となく理解できる)
「…少しは喋ってくれよな。あ、そろそろ仕事か」
俺が気づくと彼女は、焦る素振りをしなかった。
ただ、だんまりと俺を見つめている。
「夜はいないから」
そういうと、
「夜ご飯はどうするんですか?」
何だかロボットのように返事が返ってくる。
「…向こうで食うけど…」
彼女の顔つきが少しだけ変わった。
「お弁当作りましょうか」
俺は少しだけ、気持ちが弾んだ。
言われるままに頷いた。
(料理作ってくれるなんて、今までなかったから…。こういうの嬉しいかも)