「あいつのせいで…あゆみが…」

俺が言うと、お兄さんが頬を叩いた。



びっくりして顔をあげる。



「…人のせいなんかすんなよ!」



大きな声が病院内を響き渡る。


藍も驚いて、お兄さんを見つめていた。

殴られたはずの頬は、全く痛くない。



「お前の生き様は、ひとのせいにしてただあゆみだけを見れる世界なのか?!

あゆみだけじゃねぇんだぞ!?


アイツだけを守ればいいっていうんじゃねぇ!

傍にいたはずの存在を、どうしてそんなにも捨てれるんだよ…」



お兄さんの声が、冷え切った心に響いた。


俺は桃乃の顔を見ていなかった。


ただただ、イヤだと言って離そうとしていた。