「お爺ちゃんの言うことちゃんと、聞くのよ?」


「うんー!」



「ハンカチ持った?切符は?履歴書とスーツの靴は?まさかあんたそれで!?」

お母さんは、私の持っている黒いバックを目を見開いて見つめる。

はあ……お母さんったら心配症なんだから。


「大丈夫!ちゃんと黒いの入れた!」


「新幹線に荷物忘れない様にね。うとうとして乗り過ごしたらだめよ?」


「分かってるよー、毎年行ってたんだから大丈夫だって!」


私は家のドアを開けながらお母さんの方に振り返る。


「ほら、ちゃんと帽子かぶってー、熱中症になるよ?」

うちの親はどこまで心配症なんだろ。


「いいってばー、大丈夫」


私、これで大丈夫言うの何回目だろ……


家から出て、お母さんに手を振った。


「いってきまーす!」


・・・・


走って家の近くにあるバス停まで向かう。


あー、暑いなあ。


そんなしょーもない事を、思い浮かべながら。



バス停まで、着くと青いベンチに自分の荷物を置いて一息。

空を眺める。


なんて、広いくて青い空なんだろう。


これを思うのも何回目だろう。


ふと、昔のことが脳裏にのよぎる。










そう、彼に初めて出会ったのは……


私がまだ6歳の時でした。