紗和ちゃんは人の心をつかむのがうまい。それはきっと人生経験が豊富だからだと思うが、俺は純粋に凄いと思った。
「神崎くんは白谷さんの彼氏?」
「え?あ、はい。」
突然紗和ちゃんに振られてびっくりした。
反応できなくてつい「え?」とか言ってしまったが、紗和ちゃんは気に留めていないようだ。
「腕みてどう思った?」
「………俺は、正直見てて痛々しいし、こんなことやめてほしいと思いました。」
「でも、やめてほしいなんて言っちゃダメだからね。」
「えっ?」
やめてほしいって、なんでダメなんだよ。
その答えは紗和ちゃんが優しい声で教えてくれた。
「リストカットはね、言葉に出来ない心の叫びが形に現れたもの。本当は誰かに救われたいと思っているけど、それを口に出して言えない。もう、精神的に辛くて壊れそうだっていうサインなの。」
「傷を残す事が…ですか?」
芽衣が辛い状況だったっていうのは知っている。
それでもなお、リスカをしているのは、人の気を引きたいだけだと俺は思った。
でも、多分、死にたい位つらいけど、なんとかリスカ程度で治まっているといった方がいいのかもしれない。
「紗和ちゃん…、俺どうしたら………。」
芽衣は隣でまだ泣いている。
不安になって俺は背中をずっとさすっていた。
