「あれ?芽衣また具合悪くなったの?」
「エミぃ……。」
糸が切れたかのようにミサは涙をこぼし始めた。
「え、ミサ!?ちょ、どうしたの!?」
*
女子トイレの一番奥。
そこが芽衣の指定席。
昨日奏に巻いてもらった包帯を外して、まだ傷跡がはっきり残っている腕に、カミソリですーっと切っていく。
何度も、何度も、何度も何度も。
気が付けば、また上腕が真っ赤になり、皮膚が見えなくなっている。
「奏ちゃん、約束やぶっちゃった。」
友達を裏切ったこと、怒られた事、奏ちゃんは私の彼氏なのにまだ執着しているミサにイラついている事。
色んな感情が織り交ざり始めた。
一番強い感情が、奏ちゃんを取られるくらいなら、あいつを殺したい。
そんな気持ちを抑制するかのように、真っ赤になった腕の写メを取り、奏ちゃんに送りつける。
また、心配してもらえる。奏ちゃんなら優しくしてくれる。きっと私のもとへ駆けつけてくれる。だって、奏ちゃんは昔から私の王子様だった。
