芽衣は奏といつもどおり2人で学校へ向かうと、教室の入口でミサが待っていた。

周りは騒がしいのに、芽衣とミサの空間だけ静寂が訪れている。


「芽衣、あたしに言う事あるんじゃないの?」

「………。」

「ずっと、嫌いだった。ちょっと傷ついたら被害者面して、周りの同情を仰ぐ。そのくせ、あたしが前から好きだって言って、協力もしてくれるって言ったのに…。」

「ごめんなさ…。」

「謝んないでよ!!!」


ミサは自分の怒りをどこにぶつければ良いのか、自分自身もわからなくなっていた。

ずっと、どんくさい芽衣の面倒を見てきたのも、ムカついても決して顔に出さず我慢してきたのも、全て奏に好かれる為だった。

それが昨晩の電話で全て終わってしまった。

目の前にいる今にも泣き出しそうな少女のせいで。


「どうして、どうしてこのビッチが選ばれるの!?裏であたしの事笑ってたんでしょ!!」

「ちがっ。」

「幼馴染だから?あたしの入るスペースは無かったって事?」

「…………ごめ…ん…なさい。」


謝られる度に自分が悪役になった気分になった。

そこでエミが空気を壊すかのように「おはよー!」と笑顔でやってきた。

その姿を見て芽衣は教室から逃げていく。