「……結局、何て言ったの?」
「……何か食べる? って」
彼女はうんうんと頷いた。
「食べる食べる」
ぼくと生嶋さんはワゴンの前で足を止め、立っている小さな黒板に描かれたメニューを見た。
このワゴンでは主にスイーツを販売しているらしい。
こんな寒い中、ソフトクリームを頼むような人はなかなかいないのに、なんで冬でも販売してるんだろう。
そんなどうでもいいことを思って、再び黒板に描かれた白や黄色の文字やイラストに目を落とす。
「私は……どうしよう。滅多に食べれないし、チョロスにしようかなぁ」
「チョロスか……。じゃあ、ぼくもそうしようかな」
ぽつりと言葉を漏らすと、生嶋さんの頬が朱に染まったような気がした。
長蛇の列ってほどでもないけど、人は並んでいたほうだと思っていたのに、スタッフの手際が良いせいかあっという間に順番が回ってきた。
「ご注文はいかがいたしますか?」
「あ、えっとチョロスを一本……」
「お味はどうされますか?」
「へっ!? 味!?」
そういえばぼくたち、味決めてなかったな……。


