生嶋さんにそんなことを言ってもいつだってきっと、帰ってくる言葉は「大丈夫」。



 だからぼくは、銀色の手すりを掴んだ彼女の横に並んだ。



 
 さっき道端で横に立った時よりもずっと近い距離に、生嶋さんが目を見開いて朱(アカ)くなった顔をこちらに向ける。


 分り易すぎる反応を示す青めの黒髪の少女へ、ぼくはふっと微笑んで言った。



「生嶋さん、ぼくに寄り掛かっていいよ」



 後から思うとなんて恥ずかしい台詞だったんだと、羞恥に頭を抱えて転げまわりたくなる。


 だけど、そんな頼りなさ気な細い身体が電車の揺れにされるがままにふらふらしているのを見るほうが、つらい。


 なんで体調が悪いのに今日、デートに誘ったんだろう。今からでも家に送っていくべきかな。それとも、単なる電車酔い?



 最初こそは赤くなってあたふた目を回しながら「えっ!? そ、そんな悪いし…………恥ずかしいし……っ」




 最後にぼそっと言っていたのは聞こえなかったけど、やっぱり遠慮をしているようだった。


 でも、ぼくの「ぼくのことも頼ってよ」の一言で恥ずかしそうに頷いた。