沸き上がる歓声を聞きながら、隣にいた杉野がずっと浮かない顔をしている。

「もう諦めろよ。俺も諦めたからさ」

「お前はいいじゃん!足速いんだろ?俺なんてタイム的に後ろから数えたほうが早いのに」

「だってそれは……」

単純になかなか決まらなかった男子のリレー選手決めで、『池内くんと仲がいいから杉野くんも走れば』なんて誰かが言ったから。


他の男子は自分が選ばれないようにさっさと違う種目に流れて、結局数合わせのように杉野もリレーの選手になってしまったというわけ。

俺も普通に逃げ出したいけど、俺以上に杉野が真っ青な顔をしてるから逆に冷静になってる。


「ちょっとトイレ……」

「またかよ」

俺は杉野の付き添いでグラウンドから一番近い校舎の入り口へと向かった。


杉野が個室に閉じこもってる間、俺は壁に寄り掛かってスマホを触った。

外では次の種目のアナウンスが流れていて、確かそれが終わったら次は全員参加の綱引きだった気がする。