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それから暫く経って、季節は夏になろうとしていた。
まだセミは鳴かないけど、たまに感じるモヤッとした生暖かい風が夏の知らせを運んでくる。
気温が上がれば上がるほど体は動かしたくない。亀のように殻にこもってダラダラしていたい。
そんな気持ちとは裏腹にまた面倒な学校行事が始まろうとしていた。
「そろそろ体育祭の種目別の選手決めをしようと思う」
担任のそのひと言で俺のテンションはさらに落ちた。
球技大会が終わったばかりなのにもう体育祭とか、俺は体育会系の高校に入学したつもりはない。
だけど、そういうスケジュールの学校に入ったんだから仕方ないといえばそうだ。その分、秋は文化祭ぐらいしか行事はないらしいし。
体育祭の実行委員を中心に次々と黒板に種目が書かれていく。
「池内くんはなにかやりたいものとかあるの?」
俺がぼんやりと窓の外を見ていると、隣の席の前澤さんが声をかけてきた。
他の女子と違って前澤さんとはこうして普通に話せるようになってきている。
「俺は特になにも」
「そっかあ。池内くんが応援団長とかやってくれたら女子は盛り上がるのになー」
いやいや、なにを言ってるんだ。
応援団長っていうのは元々目立ちたがりの人がやるんだよ。ちょっと俺への印象が変わってきてるからってそんな大役が務まるわけがない。



