「玲汰」

ふと、名前を呼ばれた。

いつもの口調で、いつもの上から目線で、莉緒は俺を見る。


「ちょっとカッコよかった」

ドキッと心臓が一瞬、跳ねた。

今のは褒められたんだと思う。こいつの言動でいちいち一喜一憂してしまう俺ってなんなんだろう。

俺はそんな気持ちを隠すように話を反らした。


「お、お前ってさ、こんなに痩せてたっけ?ダイエットでもしてんの?」

元々身長のわりにはやせ形のほうだけど。


「してたらなに?」

「そういうのするなよな。お前は別に太る体質じゃねーんだし今だって他の人より軽いほうだろ。だから貧血起こして倒れたりするんだよ」

すると莉緒は眉をピクリと動かして俺の頬を思いきり引っ張った。


「……いたたたっ!」

「私に説教するなんて生意気なんだよ」

莉緒はそう言って寝ていた体を起こした。

さっきまで倒れてたのが嘘のようにケロッとしていて、本当に演技だったんじゃないかと疑ってしまう。


「お前なんなんだよ、本当に……」

つねられた頬っぺたがまだ痛くて俺はそこを抑えた。


「昔は私が玲汰をおんぶしてたのにもうできないな」

「……え?」

「軽々しく私を抱えたりして玲汰のくせに生意気なんだよ。バカ」

何故だかその顔がちょっと寂しそうに見えた。