真ん中に川が流れてて夕焼けが反射していた。


その両側には桜の木が植えてあって、それが向こうまで永遠に繋がっている。

春になれば一帯がピンク色に染まって毎年花見客がたくさん訪れるほど。

夏は祭りで賑わって、秋は紅葉、冬は霜柱ができて川に薄い氷が張る。


四季によって変わる色。河川敷に下りればもっとそれを近くで感じることができるんだろうけど、俺はこの歩道橋から見る景色のほうが好きだったりする。


「けっこう久しぶりだよな、ここに来るの」

莉緒が手すりに触れながら景色に目を向けた。


保育園も小学校も中学校もこの場所は通学路じゃなかったけど、たまにこうしてふたりで来てた。

趣味も性格も思考も合わないのにここだけはお互いのお気に入りの場所で、とくに俺がからかわれて落ち込んでる時は決まって元気づけるために莉緒が連れてきてくれた気がする。


「そういえばさ、むかし川に捨てられてた子猫を助けたことがあったよな」

ふと、莉緒が懐かしいことを言った。


「あー、あったあった」

あれはいつだったっけ。確か小学2年生ぐらいの話。


「あんた泳げないくせに私が行く前にあの土手から川に飛び込んでさ。子猫だけで済んだはずなのに私が玲汰まで助けるハメになって」

「あの時、莉緒も溺れかけててマジで笑いごとじゃなかったよな」

「それを笑いながら言うなよ」」

「もう時効だろ」

ふわりと俺たちの間に風が通る。