それから暫くしてピンポーンとインターホンが鳴った。覗き穴から一応確認して、ため息混じりにドアを開ける。


「来るなんて俺は聞いてねーぞ」

そこには私服姿の莉緒が立っていた。

そういえば私服は久しぶりに見た気がする。喋り方は男なのに昔からボーイッシュな格好は好まなくて。

わりと膝丈のワンピースとか白いブラウスとか女の子らしい洋服を着てた。それは今も変わらないらしい。


「お邪魔しまーす」

俺の言葉を無視して莉緒は家の中へと入った。


「おばさん、これうちのお母さんから」

莉緒はリュックから菓子折りのようなものを取り出して、台所に立っている母ちゃんに渡していた。


「あらあら別にいいのに。むしろ玲汰が莉緒ちゃんにお世話になるんだから」

「でも泊まるとなにかと迷惑かけるからって。
今日の晩ごはんもしかしてハンバーグ?」

「ふふ、莉緒ちゃんが好きなコーン入り」

「やった!なにか手伝おうか?食器はこれでいい?」

「そっちの右端のがいいかな。買ったのはいいけど普段使いだと勿体なくて使えてなかったやつなの」

「ああ、これね」

自分の家なのにものすごい疎外感。

この時間帯に莉緒が来るなんて滅多にないことなのに違和感がないっていうか、馴染みすぎだろ。