「寂しかったんだろ?」

その帰り道。やっぱり俺は自転車の後ろ。慣れたようにペダルを漕ぐ莉緒はそう俺に問いかけてきた。

「………」

あえて聞こえないふりをした。

「寂しかったくせに」

もちろん俺は返事しない。

何度も言うが決して寂しくはない。ただ原因不明のモヤモヤが胸に充満してただけ。

コンクリートには俺たちの影がくっきりと映っていて、莉緒のサラサラとした髪の毛までもがまるで影絵のように形になっていた。

本当に変わらない。

お互いの身長とか体格とか見た目は変化していくのに、俺たちの関係はいつまでも同じ。


「おばさんには私から連絡しとくよ」

「なにが?」

莉緒はまたいきなりブレーキをかけて、また俺は鼻を強打するところだった。

気づけば俺の家に着いていて、カゴに押し詰められていた俺のカバンを莉緒は投げるように渡してきた。

 
「それなにも入ってないくせにカバンの意味あんの?」

確かに中には学生証とぐちゃぐちゃのプリントと杉野に借りた漫画しか入ってない。


「まあ、私の重たいカバンを昨日運んだ甲斐が少しはあるんじゃない」

「は?つーかさっきから言ってること全然意味わかんね……痛っ!」

馬鹿力で放たれた莉緒のデコピンは強烈で、今まで何回も涙目にされたことは数知れず。


「お前の理解力がねーんだよ」

莉緒はそう吐き捨てて、家へと帰っていった。