「ってか用がないなら帰ってくんない?」

俺はため息をつきながらソーシャルゲームをやっていたパソコンを閉じた。


そもそも玄関のカギは閉まってるのになんで自由に出入りしてんのって話だ。

持久力も体力も猿並みに備わってるヤツだから家の壁でも登って侵入してきてるんだろうか。

ありえそうで普通に怖い。


「高1にもなって登校拒否になりかけてるから笑いにきてやってんじゃん」

莉緒は俺への当て付けで買ってきたパンを完食したくせにテーブルにあったお菓子まで食いはじめた。


「それ俺が夜に食おうとしてたんだけど」

「玲汰のものは私のものだろ」

「……はあ。本当にお前さあ」

ため息混じりに言い返そうとすると、グイッと顔を強制的に掴まれて口元をぶにゅっと押された。


「お前とか誰に向かって言ってんだよ?」

「ほまえにきまってんらろ(お前に決まってんだろ)」

そう言い返したあと俺は莉緒の手を勢いよく払って、やっと顔が自由になった。

馬鹿力すぎだろ。どんだけ握力強いんだよ。


「俺をいつまでもガキ扱いするんじゃねーよ」

「ガキじゃん」

「どこが?」

「喧嘩したぐらいで学校休んじゃうくらいメンタルが弱いとこ」

「………」


正論すぎて言い返せないのが悔しい。そして莉緒はおもむろに立ち上がって俺を見下ろした。


「まあ、学校に行くきっかけはできたじゃん。これ持って袋とじ破ってすいませんのついでに仲直りしてしてこいよ」

そう言って先ほどのエロ本を俺に投げつけるように膝の上に置いていった。