「まあ、座れば」

そんな俺を見て莉緒は隣を指さす。

今日は雲ひとつない青空で大きなイチョウの木がゆらゆらと風に揺れていた。その間から溢れる太陽の光がまるで模様のように地面に写し出されている。


「いや、俺教室で食べるし」

中庭に来たのは手紙を渡しにきただけ。

それにどこにいてもなにをしてても目立っている莉緒の隣にいると俺までチラチラと見られてる気がして居心地が……。


「いいから座れ」

半ば強制的に腕を引かれて、俺は無理やり座らされてしまった。

マジで馬鹿力。

なんでこんなヤツがみんなから好かれてるわけ?俺にはその理由がまったく理解できないんだけど。

文句のひとつでも言ってやろうと体勢を少しだけ変えてみたけど、莉緒の横顔が文句のつけようがないほど整っていて、風が邪魔をする髪の毛を莉緒はそっと耳にかけた。


「なんだよ」

不機嫌にこっちを見て、ビー玉のような目が細くなる。

黙ってりゃ少しは可愛げがあるっていうのに。