それから暫く経って、あの登校拒否が嘘だったかのように日常を取り戻しはじめていたある日。

俺は人気(ひとけ)のない廊下で他クラスの女子に呼び止められた。


「あのっ……池内くんこれ」

差し出されたのは可愛いキャラクター付きの手紙。唇をぎゅっと噛みしめて、ほんのりと頬をピンク色に染めていた。

……俺のモテ期がついにきたかと、顔を気持ち悪いぐらい緩めていると女子生徒はモジモジとしながら小さな声で言った。


「立花さんに渡してもらえますか?」

「………」

俺の上がりかけたテンションは一気に急降下して、その日の昼休みに投げつけるように手紙を莉緒に渡した。


「6組の須藤さんから」

莉緒は購買で買ったパンを頬張りながら慣れた手つきで手紙を広げた。

そこには可愛らしい文字で【友達になってください】と書かれていて、連絡先まで記されている。


莉緒は男子からも女子からも本当によくモテる。

女子からは憧れられていて、こうしてラブレターのようなものを貰っては友達になってほしいと頼まれることもしばしば。

こんな口の悪い女のどこがいいのって感じだ。


「羨ましいだろ」

「全然っ!」

悔しいから全力で否定してやった。