「玲汰、好きだ。大好きだよ」

震える声で莉緒が繰り返す。


俺はその瞳に溜まった涙を指でなぞった。そしてまっすぐにその顔を見つめる。


「俺も。俺も莉緒が好きだ」

やっと同じ気持ちになれた。

はじめてこんなに近くに莉緒を感じる。


それが嬉しいのと、ちょっと照れくさいのが混ざり合ってお互いに顔を見合わせて笑った。


「なんだよ、その顔。玲汰は本当に泣き虫だな」

「それはお前もだろ」

いつもの俺たちに戻って。だけど手はずっと繋いだまま。


「私頑張るよ。1日でもあんたと一緒にいられるように。1分でも1秒でもその顔を見ていられるように」

顔をくしゃりとする笑い方。


なんて、愛しいのだろう。

この気持ちはきっと莉緒しか芽生えない。


「玲汰」

莉緒が俺の名前を呼ぶ。

その爪先が少し背伸びをして俺がその頬に触れた瞬間、ふたつの影がひとつになった。

そして確かめるように何度も、何度もキスをして、何度も何度も抱きしめた。


多くは語りたくない。
多くは望まない。

だけど、最後の最後の日まで俺たちらしく。


莉緒が笑っていられるように。

奇跡が起こるように。


ずっとずっとこうして、傍にいたい。


「玲汰、知ってる?」


莉緒がそっと俺の耳に顔を近づける。

誰にも聞かれないふたりだけの大切な言葉のように莉緒が呟く。


「私、玲汰のこと大好きじゃなくて……」


――〝愛してる〟



〔END〕