息を切らせながら、見慣れた景色が見えてきた。
ゆっくりとスピードを落として、足を止めたのは河川敷の歩道橋の前。
息を整えながら歩き進んで、ふわりと風が顔の横を通りすぎた瞬間に、歩道橋のちょうど真ん中。
川のせせらぎと新緑の風景がよく見えるいつもの定位置で、莉緒は空を見上げていた。
「莉緒」
名前を呼ぶと、その大きな瞳がこっちを向いた。
ビックリした顔はしてなかった。むしろ必ず来ると分かっていたような、そんな顔をしてた。
「留守電、聞いた。勝手に別れの準備なんてしてんじゃねーよ」
そう言いながら、一歩ずつ莉緒に近づいていく。
想いが溢れる。言いたいことが次々と言葉になって出てくる。
「お前はいつもそうだよ。自分でなんでも解決しようとして、俺が気づいた時には何事もなかったかのような顔をしてる」
「………」
「なんのための幼なじみだよ。なんのために一番近くにいるんだよ」
「………」
「俺がそんなに頼りねーかよ。いつまでもガキ扱いしてんじゃねーよ」
なんなんだよ。
いつも人の心にズカズカと入ってくるくせに自分は隙を見せないし、入り込ませようともしない。
ふざけんなよ。ふざけんな。
莉緒まであともう少し。
俺の足が目の前で止まって、その顔を見つめた。
「……っ、ふざけんなよ。好きだって言葉にしなきゃ分からねーのか、バカ野郎!」
そう言って、莉緒を力強く抱きしめた。



