玲汰、知ってる?



信じられないだろ。

私もだよ。

家族以外にこのことは知らない。お姉ちゃんにも玲汰には絶対に言うなって口止めしてた。


宣告されて、自分のことなのに実感がなくて。

だけど、全部現実なんだ。


病気は治らないくせに、症状だけは立派に進行してて。

本当は家ではほとんどご飯も食べられなくて、
意識が朦朧とするぐらい痛い頭痛を薬で少しだけ抑えるだけ。


でもあんたの前でムリしてたわけじゃないよ。

不思議だけど玲汰といる時だけは苦しいことなんて、ひとつもなかった。


自分が死ぬかもしれないって思って、夏の終わりにはここにいないかもしれないって知って。

一番最初に頭に浮かんだのはやっぱり玲汰のこと。


私はさ、玲汰にだけは弱さを見せたくなった。


ずっと強くいたかった。
いつもその一歩前を歩いていたかった。

だって、振り返ると必ずいる。


ちょっとふて腐れて、文句があるくせに私についてくる。

そんな顔は並んでたら半分しか見えない。

前を歩いてたら、玲汰の全部が見えるから。