そして黄昏時の学校帰り。
変わらずに一緒に帰って俺の家の前で別れる。話も普通にするし、365日ある日常の中の当たり前のひとコマ。
「じゃあな」
また笑顔で、あいつがそう言う。
「……莉緒っ」
自転車に足をかけたところで俺は呼び止めた。
「ん?」
サラサラとした髪の毛をなびかせて、その顔が振り向く。頭ではたくさんの言葉が浮かんでいたはずなのに莉緒の顔を見たらすべてが飛んでしまった。
「あ、あ、えっと……」
俺はポリポリと頭を掻く。
「……なんだよ?」
「ゆ、遊園地また行く?夏休みとかさ、イベントやるって書いてあったじゃん。乗り物だって全部回れたわけじゃないし、また今度……」
そんな話し方が乱れる俺を見て莉緒はフッと笑う。
「玲汰の課題が終わったらな」
そう誤魔化されて、あいつは走り去ってしまった。
無理やり俺を遊園地に連れていったくせに俺が誘うと莉緒は〝行く〟とは言わない。
不安が消えない。
この耳元で騒ぐセミたちのように夏が終わって気づいたら静かになって。うるさかったのが嘘のように俺の前から消えてしまうんじゃないかって。
そんな不安が、ずっとずっと消えない。
だからなのか、俺は見えなくなるまであいつの後ろ姿を見つめていた。



