玲汰、知ってる?



――ガラッ。

保健室に着くと、すぐにあの独特な消毒液のような匂い。クルクルと回転する椅子に座って資料のようなものを見ている養護教諭の先生がいた。


「あら、どうしたの?」

白い白衣を着て、メガネをかけた女の先生。

うちの学校は男の先生が多いし、保健室の先生というだけでポイントが高いらしいから無駄に男子生徒が出入りしていることは知っている。


「ちょっと鼻血が」

「あらあら。じゃあ、ちょっとそこに座って」

俺が丸い椅子に座ると先生は柔らかいガーゼのようなもので優しく鼻を押さえてくれた。


「暫く上を向いててね」

ふわりと、大人の人の香り。

きっと他の男子にしてみたらドキドキするようなシチュエーションなんだろうけど、俺の胸は高鳴らない。

むしろ冷静に頭はあいつのことばかりを考えている。


……そういえば球技大会の時に莉緒をここまで運んできたっけ。

思えばあの時からあいつの体の変化には気づいていた。


貧血もおかしいと思ったし、少し痩せすぎてるなって感じてた。もしかしたら俺が知らないところで相当なムリをしてたんじゃないかって思う。


だって脳の病気なんて、その言葉だけで怖くなるのに、見えない恐怖と莉緒はひとりで戦ってたんじゃないかって。

平然と玄関を開ければ『おはよう』なんて普通の顔をしてるけど、本当は眠れない夜もあったんじゃないかって。

そう、考えるだけで胸が苦しくなった。