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「池内くん、さっきの授業のプリントなんだけどさー」
教室は相変わらず騒がしい。それをうるさく感じていたはずなのに最近は馴染めているせいか居心地の悪さはなかった。
こうしてクラスメイトたちから話しかけられるし、俺も普通に対応できるようになったし。
やっぱり体育祭のあの出来事が大きかった。
あれだけの大衆の前で全力疾走できたんだから、人と話したり関わったりすることは、なんてことないって思えてる。
「……なんだかんだ、あいつのおかげなんだよな……」
窓の外を眺めながら、ぽつりと呟く。
「え?なにが?」
どうやら独り言が聞こえていたらしく、杉野がすぐに反応した。
「うおっ、操作ミスった!やべ、負ける」なんて、この間にも杉野はスマホアプリに夢中だけど、いまだにリレーのことを振り返って話したりするから杉野の中でもいい思い出になったんだと思う。
「なんかあいつさ……」
「ああ、立花さん?」
「ヘンなんだよ」
「どこが?」
「わかんね」
「なんだ、そりゃ」
噂をすれば中庭に莉緒の姿。食堂の前にある自販にでも行くんだろうか。友達と楽しそうに横並びになって歩いている。
この違和感は俺にしか気づかない。
言葉にしたいのに俺の言語力がないからなのか、うまく表現できないけど……。
近くにいるのに、何故か遠く感じるんだ。
まるでアスファルトの上の陽炎のように、もやもやと揺らめいているような、そんな感じ。



