親父との電話を切って俺はスーパーへと向かった。残り数本になっていた特売品の醤油を買って、また歩いてきた道を歩く。

あいつにメールで聞いてみようと思ったけど、
なんだか真面目な返信が来るとは思えなかったし、幼なじみだからといって、なんでも報告し合う義務はないと思いとどまった。


「玲(れい)?」

一瞬、俺じゃないと思ったけど、この省略された呼び方とその声には聞き覚えがあった。


「あ、やっぱり玲だ!元気?久しぶりだね!」

立花家のDNAを受け継いだ長い足。

この街では浮きそうなほど露出の多い服を着て、茶色いふわふわの髪の毛を揺らして近づいてくる。


「……ね、姉ちゃん!?」

それは莉緒の4つ上の姉。名前は由梨(ゆり)。

ひとりっ子の俺を莉緒同様に可愛がってくれて、姉ちゃんがこの街を離れたのは高校卒業して大学に行った時だから、もう2年前になる。

美人で昔から目立っていたけど、この2年で派手さが増したのか声をかけられなかったら絶対に気づかなかった。