それから数日が経って、ある日の週末。

カレンダーは7月になっていて、窓を開けないと蒸し暑くて寝れない季節になった。

部屋にエアコンはないし、毎年扇風機で乗りきっているけど今年の暑さはヤバい気がする。

こんな日はアイスでも食べながら一日中リビングでゴロゴロとしていたい。


「玲汰ー。醤油買ってきて」

そんな時に限って、母ちゃんに雑用を頼まれる。


「えームリ、溶ける」

「あんたは溶けない!駅前のスーパーの醤油ね。あそこは週末になると安くなってるから」

どうして俺の周りにいる女はこうも俺使いが荒いのか。まあ、その日常に慣れてしまってる自分が一番虚しいんだけど。


『あーもしもし?俺。うん。元気。そっちはどんな感じ?』

その途中で俺は電話をかけた。


発信元は親父。昨日の夜に着信があったけど、
なかなかタイミングがなくて今かけ直したところ。

親父とはたまにこうして電話で話す。

とくに深い内容はない。

お互いの近況を報告したり、雑用を頼まれる母ちゃんへの愚痴を聞いてもらったり。

親父は俺と性格が似てるから、わりと共感できる部分は多い。


『あ、そういえば莉緒ちゃん元気か?』

電話の向こう側で突然、そんなことを聞かれた。