それから閉会式をやって、長かった体育祭がようやく終わった。

俺も含めた男子のリレーチームはクラスメイトから揉みくちゃにされるほど褒められて、いつもは女子の権力に押し潰されてる俺たちだけど、今日だけは少し良い気分。

それでも総合優勝は3年生に持っていかれて、
成績的には良いほうじゃなかったけど、いい思い出にはなったと思う。


「乗れ」

莉緒がいつものように自転車の後ろを指さす。

体育祭のテンションのまま遊びにいく人が多い中、俺たちはいつもどおりの帰り道だ。


こいつから特に労(ねぎら)いの言葉はない。

まだリレーの余韻が続いているのに、ここだけは妙に現実感があって。いつもと違うのは髪の毛を結んだままの莉緒の後ろ姿だけ。


「なんか、ないの?」

あえて主旨(しゅし)を言わずに簡単に聞いた。

「なんかってなんだよ」

分かっているくせに知らん顔。