玲汰、知ってる?


地響きのような歓声を聞きながら、周りの景色がものすごく速いスピードで流れていく。

それに合わせて、前の人を抜いた。

あと、ふたり。


――『思い出したんだよ。あの中学1年の夏に玲汰に負けた時のこと』

俺は走りながら、あの日の会話を思い出していた。


『玲汰の横顔がなんだか玲汰じゃないように思えてさ』

なんだよ。それ。


『ずっと泣き虫な子どもだったのに、いつから玲汰を見上げるようになったんだろうとか』

なんなんだよ、お前。


『そんなことを思ってたらあっという間に玲汰に抜かされてた』

いい加減にしろよ。

いつも俺を追い抜いていくのはお前のほうだろ。


ヒーローみたいな顔をして、いつも俺のことを守って。

そんな自分が嫌で、周りからなめられるのが嫌で。

それだけの理由で俺が小学校の6年間、好きでもない牛乳を吐くほど飲んだと思ってんの?

早く追いつきたかったんだよ。

お前の背中ばかり見るのは、もう見飽きた。