眠れる森の彼女

この時間、働けりゃ稼げんのに。


俺には金が必要だ。


あの女から解放される唯一の手段。


それにしても何でここの自販機には冷たいココアが売ってねぇんだよ。


美術室で苦いコーヒー牛乳片手にメロンパンを食べ終わろうとしていた時だった。


バサバサバサ──


視界の端。窓の外で何かが落下したかと思えば、物音をたてた。


鳥が怪我でもして落ちてきたのか?


椅子から立ち上がり、開け放した窓に近づく。


地面に落ち、砂に塗れた教科書とノート。


俺は上履きのまま、窓を跨いで外に出た。


大学ノートには1ー1……なんて読むんだ、これ。


整った生真面目な文字で“紅月 吏那“と明記されている。