12月29日。

今年も残す所あと僅か。

丹下 龍乃は自室で正午前に目を覚ます。

「んに~…」

ベッドからムクリと起き上がり、大きく伸びを一つ。

「いやぁ…昼前まで寝てても誰も怒らない…冬休みって最高だねぇ…二度寝は神の誘惑だよ…」

何か訳の分からない事を言いつつ、階段を下りて自室へ。

縁側に向かうと。

「ぇあ?」

父・龍太郎がガタイのいい男と将棋を指していた。

夕城の大旦那、翡翠だ。

相変わらずの仏頂面で、面白くなさそうに桂馬を手にする。