「何でもないよ、功クン。行こうっ」 自分から手を繋ぎなおすと、何だか照れくさい。 でも功クンと向き合いたい。 ―もう過去なんて見ない…。 「ねぇ、妃鞠ちゃん」 「ん?」 「あのさ、」 いつになく真剣に功クンは呟いた。 「俺は待ってるから。焦らないで、ゆっくり決めて欲しいんだ」 「…功クン」 「そんなに無理して向き合う必要なんてないんだ」 少しだけ気持ちが軽くなる。 功クンの言葉は、いつだって魔法のよう。 「優しいんだね…、本当に王子様みたい……」